pom職人の朝は早い
「まぁ好きではじめた仕事ですから」
最近は良い親pomが少ないと愚痴をこぼした。
まず、pom.xmlの入念なチェックから始まる。
「やっぱり一番うれしいのはpom変更後にJenkinsでエラーが出なかったときね、この仕事やっててよかったなと」
「毎回毎回参照するライブラリのバージョンが違う。機械では出来ない」
基本的な形は決まっているが、最近はソシャゲ業界でありがちな、大量に派生する横展プロジェクトの立ち上がりを受け、最適化を図る時間もなくコピーしなければならないのが辛いところ、と彼は語る。
「やっぱりコピーしたpomのメンテナンスはキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ(笑)」
「でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてないよ」
「このdependencyはダメだ。ほら、commons-loggingに依存してるのでslf4jが使えなくなってしまう」
彼の目にかかれば、見るだけでpomの良し悪しが分かってしまう。pom.xml職人、ここにあり。
今、一番の問題は後継者不足であるという。数年前は何百ものpom工房が軒を連ねたこの界隈だが、今では職人は彼一人になってしまった。問題はpom.xmlをソラで書けるようになるのに2年はかかることだと、匠は語る。
「自分が気持ちよいのももちろんだけど、使ってくれる人はもっと気持ちよくないといけないね」
「もちろん出来上がったpomは一つ一つ私自身で試しています」
ここ数年は、Gradleに押されていると言う。
「いや、ボクは続けますよ。待ってる人がいますから───」
pom.xmlの灯火は弱い。だが、まだ輝いている。
「時々ね、わざわざskypeまでくれる人もいるんですよ。またお願いしますって。ちょっと嬉しいですね」
「AWS環境からわざわざProxyまで立てて参照しに来るプロジェクトもいくつかある。体が続く限り続けようと思っとります」
2013年、struts2の脆弱性対応によるあまりのアップデートの頻度に一時はpom職人をやめることも考えたという。
「やっぱりアレですね、たいていの若い人はすぐやめちゃうんですよ。 他のプロジェクトのコピーで良いとか、直接ビルドパスに突っ込めばいいとか…… でもそれを乗り越える奴もたまにいますよ。 そういう奴が、これからのpom.xml界を引っ張っていくと思うんですね」
最近ではそんな仕事に対する姿勢がGruntfile職人にも注目されているという。 額に流れる汗をぬぐいながら
「最先端に追いつき、追い越せですかね」
そんな夢をてらいもなく語る彼の横顔は職人のそれであった
今日も彼は、日が昇るよりも早くpom.xmlの整形を始めた。 明日も、明後日もその姿は変わらないだろう。
そう、pom職人の朝は早い